デジタルもの 音響関係

e/MERGE エレドラの新境地開拓か!?

 エレドラってご存知ですか?本来ならば,音楽ネタなのでMusicサイトの方で紹介するのが筋なんだろうけども,もはや新ガジェットとして見えなくもないエレドラ(エレクトリック・ドラム)について,こちらではまず概要の紹介をしていく形になります.それぞれのメーカーの比較が見たい方はページ下部へ.

エレドラの音との出会い

 はじめてその音を聞いたのは,ロックバンドLUNA SEAのさいたまスーパーアリーナでのライブでした.初めの曲が始まる瞬間,ハイハットを叩く音が,正に棒きれが金属を叩く音だ!って感じですね(表現悪い).今思えば,それは最高の状態で録音された音を,爆音でさいたまスーパーアリーナという試聴ブースで聴いていたということに他ならないわけですが,実は,そのことを知ったのはずっと後になってからになります.

 その後,ドラマーの真矢さんが,いくつかのインタビューでエレドラについて語っているのを知って,改めて「あ,あのときの音はその音だったんだ」ということに気づきます.実際,いろいろな曲で違った音が鳴っているんですよね.さて,e/MERGEについて最近ご本人が語っている動画が発表されているので,そちらを観てみましょう.

本人インタビュー

個人にとって何が良いか

 こんな感じで,最先端のテクノロジーがアーティストと協働でより良いものを作っていくという作業は,素晴らしいなと思います.また,そんな過程に関われるのが羨ましくも思います.さて,そんな共同作業の賜物ともいうべきこのe/MERGEを,一ドラマーである私達が享受することには,どんなメリットがあるでしょうか.

自身の演奏の再現性

 この製品は,ドラムメーカーのPearlと電子楽器に強いKORGが協働しているところにも,その面白さがあります.これによって,ドラムの音を電子的に再現することにつながっているのですが,e/MERGEのホームページには以下のような記述があります.

WAVEトリガー・テクノロジーは、プレイヤーが”リアルタイム”で生み出す生音を、あらかじめ録音された高解像度音源に融合させているため、あたかもアコースティック楽器を演奏したような、非常にスムーズなダイナミクスを実現しています。そのレンジの広さも、従来のサンプリング音源の電子ドラムとは全く違うレベルまで高められました。

e/MERGEホームページより

 KORGのテクノロジーで進化したのは,まずこのトリガー部分ってことなんでしょう.従来から電子ドラムを使っていた人は,プラ部分を叩けば音が出るって言うことは知っているけれど,その精度が高まるっていうことはどういうことなのか.一つは,音源が高解像度なものに変わっているということ.これは,真矢さんの場合,自ら録音した音源を使っているということですね.それから,キーボードなどで言うVelocityに当たる音の速さが,結構タッチによって変わるように作られているというところが,インタビューなどからも読み取れます.もう一つは,これもインタビューでも直接言及しているところですが,音に遅れ(Latency)がほとんどないっていうことでしょうか.この辺は,ライブで生音と合わせている真矢さんの演奏から,理解できるところでもありますね.生音と同時に鳴らすことができるって時点で,その価値がわかりますよね.真矢さんご本人は,バスドラとシンバル関係は生音にして,その場でミックスしているらしいことが,映像からは見て取れました.

宅録のクオリティアップ

 じゃあ実際,私達がこれを使うってなった時に,どういう場面で使えるかなっていうと,宅録のクオリティが結構上げられるんじゃないかなってところは思います.もちろん,スタジオで生音を録ろうっていうのは,それはそれでいいと思うんだけど,宅録で何とか済ませられたらっていうことを考えますよね.スタジオ代もばかにならないし,何なら録音するたびに何十万もかかるってことを考えると,これ一台でそれを済ませられる時代が来たら,案外世界は変わってくるのかもしれません.

ライブハウスなどでの活用も?

 同じように,ライブハウスにもこれが一台あると,いろんなバンドの音色を構築していくのがより簡単になるかもしれません.もちろん,ユーザー側が音色を事前に指定してきて,現場でそれを他の楽器と混ぜてミックスを構築していくといったようなやり方が可能になるのかなと思います.

 ライブハウスでの使い勝手としてちょっと違うのは,いわゆるドラムの生の振動というのは失われると思われるので,その部分をどのように補うかですね.これは,LUNA SEAの他のメンバーも言及していましたが,振動はやっぱり(少)ないみたいです.そうすると,そういう身体への振動を味わいたくてライブハウスにやってくる人々のニーズとはちょっと離れちゃうのかなとは思います.
 ですが,ある程度大きな箱で既にやっている方は,PAから出ている音のほうが断然大きいでしょうから,お客さんにはその違いが気にならないでしょう.その辺,箱のサイズにもよるかな.日本でも既に発売されています.早速,試してみてはどうでしょうか?

比較

 ってことで,e/MERGEの出現をもとに書き始めた本稿ですが,他社の製品だと,どんな感じなのか.少し調べてみました.

ローランド TD-17KVX

 まずはROLANDが出している,TD-17シリーズですね.V-Drumsと呼ばれるテクノロジーで,こちらも生音感に定評があります.ROLANDは,この点いろいろ工夫していて,まず生ドラムにV-Drumsの性能を載せるという方針で,以下のACOUSTICSバージョンと,トリガーバージョンをラインナップしています.これらはハイブリッドタイプとでも呼びましょうか.

Roland ローランド / TD-50KV with KD-A22 +MDS-50KV V-Drums 電子ドラム システム(バスドラ本体別売)【御茶ノ水ドラム館】

 これらは,そもそも生ドラムをエレドラと化す方略で,トリガーをドラムに付けて,どこから振動を電子音に置き換えるタイプですね.V-DrumsやKORGのWAVEシステムとの比較とかやってみたいところですが,基本的には生ドラムにトリガーをつけるのが,ハイブリッドタイプのやり方ですね.

ヤマハ DTX452KUPGS

 もう一社ヤマハも電子ドラムにあたる製品を出しています.ヤマハは特にコンパクトに収納可能などという方針で,設計していることがわかります.自宅使用者に嬉しい設計ともいえます.あとは,ヤマハらしさとして,基本的にトレーニングのための道具として考えているというところが大きいのかなと思いました.確かに,自宅で叩くことを想定すると,スタジオとかにそうちょくちょく通えないユーザーとしては,嬉しい設計かもしれません.

 あとは,それぞれ好みかなとは思いますが,ROOLANDとYAMAHAについては,比較動画があったので,下に貼っておきますね.

最終結論

 さて,この記事ではe/MERGEと,その他既存の電子ドラムとを紹介してきましたが,やはり家で練習するのか,現場に持ち込むのかというラインが一つあるなと思ったのと,もう一つはe/MERGEはそこを超えて,どちらでも使えて,実戦の武器になるみたいなところまで目指しているのかも?と思わされる内容でした.あとは,生ドラムのメーカーと電子楽器のメーカーが組んで,新しいレベルに持っていこうという感じがして,好感が持てました.ユーザーが増えて,それに色々と意見申し上げることで,またこの辺りの業界も盛り上がってくるのかなと思いますので,まずは叩いてみることをおすすめします.

 その後,2022年8月26,27日の武道館”復活祭”では,また新しいドラムセットで臨んでましたね.こちらも,ご参考まで.

本記事が参考になりましたら,SNS等でぜひシェアしてください.
本サイトでは様々なモノを紹介しております.

返信を残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA