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デジタル通貨の流通(上)

 この記事は同名の記事(全2回)の前半分になります.後半部分はこちら
 この記事では,デジタル通貨の流通について書いています.なお,いわゆる仮想通貨のことではありませんので,その筋でこのページに来られた方には,あまり有用ではないかと思われます.
 ここでいうデジタル通貨とは,各国の中央銀行が発行すると目される,現実の通貨に相当することになるであろう,デジタル通貨(CBDC:Central Bank Digital Currencies)のことを指しています.

定義

 敢えて,定義をするとしたら,国際決済銀行が出している,こちらのレポートに書かれている,以下のようなものが良いでしょうか.

A CBDC is a digital payment instrument, denominated in the national unit of account, that is a
direct liability of the central bank.
CBCDは,中央銀行の直接債務の一つである,国の計算貨幣建ての,デジタルな支払い手段である.

Central bank digital currencies: foundational principles and core features

 ちょっと専門的な説明があれですが,計算貨幣建てというのは,「商品の交換価値を表わす基準となり、円、ドル、ポンドなどの価格の尺度となる貨幣。価値計算の単位としてだけ機能している貨幣。〔英和商業新辞彙(1904)〕」ということなので,大元は金何gに対して何ドルという価値を定めた基準のこと.簡単に言えば「広い意味では、紙幣(お札)や硬貨(コイン)といった現金ではない、データ上でやり取りされるお金のこと」.ですが,私たちが既に使っている電子マネーは,各事業者が扱えるようにしたものである一方,中央銀行つまり日銀が発行するという点で,少々異なります.
 お金の根幹を創っている価値とも言え,それをデジタル化することには,色々と障害がありそうです.

世界の動向

 日本は,2021年度の早いうちに実証実験を開始する(日経)とのことなのですが,他の国はどうでしょうか?同記事によると…

中国:実証実験を実施中,22年冬季北京五輪までの発行を目指す
韓国:21年に実証実験を開始
カンボジア:19年に試験運用開始
欧州:21年の実証実験を検討
スウェーデン:21年まで実証実験:早期発行目指す
米国:日欧などの共同研究に途中参加

日経新聞2020/10/9

 こう見ると,ヨーロッパ方向で早めに.むしろ,アジアがけん引していくぐらいに見えなくもありません.
 より新しい情報によれば「国際決済銀行(BIS)のリポートによれば、世界65カ国・地域のうち6割がデジタル通貨の実験段階に進んでいる」との情報もあります.

日本の現状

では来年早期から実験していくという日本の現状はどうなっているでしょうか?あくまでも,Webから得られる資料のみですが,以下に簡単にまとめます.

中央銀行デジタル通貨の在り方

 こちらの日銀のページに依れば,CBDCのことを「中央銀行デジタル通貨」と呼ぶようですね.これからの通称として,理解していいでしょう.いわゆる仮想通貨などと区別するためにも,押さえておきたい呼称です.

日本銀行では、現時点でCBDCを発行する計画はないが、決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくことが重要であると考えている。

日本銀行

 ということで,日本としては発行する計画自体は今のところないということが言明されています.これは,何となく矛盾して聞こえるかもしれないのですが,実験はするけど発行するかは決まってない.ということでしょう.
 日銀さんは,CBDCを「ホールセール型CBDC」と「一般利用型CBDC」に分けて,

決済システム全体の安定性と効率性を確保する観点から、今後の様々な環境変化に的確に対応できるよう、しっかり準備しておくことが重要であると考えている。こうした認識のもと、今般、個人や企業を含む幅広い主体の利用を想定した「一般利用型CBDC」について、日本銀行の取り組み方針を示すこととした

同上

ようです.では,早速同ページから,CBDCに期待される機能や価値を読み取ってみましょう.
日銀のページでは

(1)現金と並ぶ決済手段の導入
(2)民間決済サービスのサポート
(3)デジタル社会にふさわしい決済システムの構築

の3点が挙げられていますが,この部分を読むと日銀は「将来,現金の流通が大きく減少する場合がある」こと,「現在流通しつつある民間のデジタルマネーが現金と並んで大きな規模になる」こと,そうでなくても「それ(民間決済サービス)を支援するためにCBDCは,決済システム全体の安定性・効率性を高めることに寄与する.と考えていることが読み取れます.つまり

日本銀行がCBDCを発行したうえで、民間事業者の創意工夫により様々なサービスを上乗せして提供することなどが、デジタル社会にふさわしい安定的・効率的な決済システムの構築に繋がる可能性も考えられる。

同上

というように,デジタル時代の決済システムは,民間事業者のサービスがかなりのウェイトを占めており,それも含めてシステム全体のことを考えて,日銀がCBDCを用意することは,あり得るやり方だと,そういうことになります.
 では,当面は実験していくとして,どんな方法でやっていくのでしょうか.

 次回は,日本が実行に移そうとしている中央銀行デジタル通貨の実現方法などについてまとめていきます.
 後半部分へ続く

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